人間には夕日を美しいと感じる心があります。これは人工知能がどんな発展を遂げても得られない感情です。
ではなぜ完璧であるはずの人工知能は夕日の美しさを感じられないのか?それは人工知能が不完全だからではなく、人間にバグが起きることで美しいと感じる心が生まれているからです。
言い換えれば「夕日がきれいだな」という感情は細胞がウイルスによって揺らいでできたものであり、一種の「欠陥状態」といえます。つまり、人間は欠けているからこそ、完璧な人間でいられるのです。
不完全だからこそ成り立っている、という点で詩情もWebライターの世界も同じだと言ったら、あなたは違和感を感じるでしょうか。
会議が始まる5分前、美味しいパスタ屋さんに並んでいる時間、なかなか開かない踏切の待ち時間。そんなとき検索した記事のレベルが低すぎてイラッとしたことはありませんか?
本記事では、副業からWebライターを始め、4年目にやっと独立して今もどーにかこーにかライター1本で生きている私が、質の低いWeb記事にイライラしているそこのあなたに向けて、ネットにWebライターのゴミ記事が溢れている理由について解説します。
結んだ口の内側に美徳というのは溜まるもの。そうとは知りつつ、言わなくてよいことまで言っちゃいます(笑)
*本記事はPRを含みます
目次
Webライターが各記事の種類
Webライターとはその名の通り、Web上の文章を書くライターのこと。資格などは特に必要なく、相手に依頼されて文章を書き、その文章がWebメディアに掲載されれば、もう立派な「Webライター」です。
時には素養さえも求められておらず、それよりも誰かの何かを受講することが受注の条件になったりします。(これはちょっとマニアックな話)
ここでは、Webライターが実際にどんな記事を書いているのか、実情を踏まえて解説します。
個人ブログ
個人によって運営されているブログは多いです。ワードプレスと呼ばれるコンテンツマネジメントシステムを使えば、プログラミングやWebデザインのスキルがなくても簡単にブログが作れます。ワードプレスはカスタマイズ性が高く、全世界で65%のシェアを誇っているんだとか。
個人ブログは
- 自分の商品を販売する
- Googleアドセンスに参加して広告で稼ぐ
- アフィリエイトと呼ばれる成果報酬型広告で稼ぐ
など、さまざまな方法で収益化できます。
収益化した個人ブログ主は、コンテンツの作成を外注するようになります。このコンテンツを作成するのがWebライターです。
キュレーションサイト
Webライターはキュレーションサイトと呼ばれる、いわゆる「まとめサイト」も執筆しています。このまとめサイトは、個人が運営している場合もありますが、多くはWebコンテンツ制作会社などにより運営されていることが多いです。
質もピンキリで、大型サイトもあれば他記事の情報をそのまま載せているようなサイトも。
運営側からしてもキュレーションサイトは人気を集めやすく、少ない投資で大きなリターンを期待できるジャンルです。原稿料もメディアによってまちまちで、ネットで見つけたライターに数百円で書かせている場合もあれば、顔写真と経歴を掲載して数万円の依頼をしている場合もあります。
オウンドメディア
オウンドメディアとは、自社サイトのことで、現在多くのオウンドメディアがブログなど文章による情報発信をしています。オウンドメディアの文章作成もWebライターの仕事の一つです。オウンドメディアは企業から直接依頼される場合もありますし、企業がWeb制作会社に外注し、制作会社から依頼されることもあります。
企業の自社サイトということで、難易度は個人ブログよりもやや高め。Webライターのゴミ記事について話すとき、オウンドメディアの場合は比較的質の低い記事は少ないと思います。企業も、自社のアピールをするために、ひどい文章を書くライターを採用しませんよね。
Webライターの記事がゴミと言われる理由3つ
これは大前提なのですが、Webライターの全ての記事がゴミレベルというわけではありません。また、Webライター業界は現在飽和状態となっており、低単価化がどんどん進んでいます。
私がWebライターになった2016年も低単価は蔓延していました。しかし、2022年現在はさらに低単価となり、時給200円くらいにしかならない仕事にWeb面談や研修を求められるなど、さらにひどい状態となっています。
もちろんWebライターの記事品質が低いことは問題なのですが、最低時給をさらに下回る賃金で働かされているライターにプロの品質を求めている…という構図もまた事実です。
これらの点を踏まえて、なぜWebライターの記事はゴミ記事と言われてしまうのか私の考えを書いていきます。
Webライターの記事はレベルが低いから
とにかくWebにはレベルの低い記事が多いーーそう思っている方も多いかもしれません。ではなぜレベルの低い記事が世に出てしまうのか。それには4つの理由があります。
レベルが低くてもお金が儲かる世界だから
1つ目は、レベルが低くてもお金が儲かる世界だから。お金を出すターゲットに向けて小難しい話をするよりも、パッと興味を引く、子供でも分かるようなキャッチーな記事の方がビジネス的には成功を呼ぶのです。
ただしお金を稼いでいるのは一部のサイトやサービス運営者と、その周辺の仲間たちだけ。Web業界は確かに全ての人に稼げるチャンスが与えられていますが、決してこれからWeb業界に飛び込もうとしている人が望んでいるような夢の世界ではありません。
記事をチェックする人の力不足
2つ目は、記事をチェックする人の力不足。Webライターの世界では、実力ではなく「友達だから」「やる気があるから」という理由でWebディレクターや編集者になれます。実力よりもSNSで映えるかどうかの方が大事なこともあるくらいです。
Googleの評価の問題
3つ目は、Googleの評価の問題です。Webライターの使命は記事を検索結果に対して上位表示させること。例えば「文章 上達方法」というキーワードに対して、1ページ目に表示されるように、1番目の記事として表示されるように執筆し、多くの読者を獲得する必要があります。
サラッと解説しますが、現時点でGoogleのアルゴリズムは日本語の文章レベルまで解析できません。視座が高いとか思慮深いとか機微まで考慮されているとかではなく、見出しにキーワードが入っているか、箇条書きがあるか、表が入っているか、など、機械的な観点からしか評価をしていないのです。
例えば「消えてしまいたい」というナイーブな検索ワードがあったとします。この場合、人間の存在価値と周囲に及ぼす影響を世界の表裏に触れながら解説した記事よりも、
- 消えてしまいたい人の特徴
- 消えてしまいたいと感じる理由
- 消えてしまいたいと感じたときの対処法
- 消えてしまいたい人の口コミと評判
- 消えてしまいたいという気持ちに関するQ&A
みたいなバカみたいな構成の方がGoogleに評価されやすいのが現実です。
Webライター業界の構造上の問題
まず、Webライターは資格がなくても始められるため、初期費用はかけたくないが、自宅で仕事しながらサクッと稼ぎたい人が殺到します。すると応募者が殺到するため、賃金はどんどん低くなりますよね。
そうなると結果的に、食い扶持は確保されているが(本業がある/夫・妻の扶養に入っているなど)お小遣いを稼ぎたいという人しかWebライターに挑戦できなくなります。
空いている時間でちょっとお金を稼げたらラッキー、という人は死に物狂いで文章の勉強をしません。発注者もお小遣い程度のお金しか払わないので、なおさら。つまり、応募者殺到→低賃金→低品質→低賃金という悪循環がまかり通っている世界なのです。
もちろん、ほんの一部のライターはレベルの高い記事を、然るべき報酬と引き換えに執筆しています。しかしそれは、本当にほんの一部です。
Webライターの記事は他記事情報の寄せ集めだから
取材記事やプレスリリース、コラム記事などを除いて、Webライターのほとんどの記事は他記事情報の寄せ集めです。
Web制作会社と制作をすると「リサーチシート」なるものを提出する場合がありますが、これにはターゲットとするキーワードに対して競合他社がどんな記事を書いているのかリサーチし、スプレッドシートにまとめ、それをもとに構成案を作成する目的があります。
つまり他記事を参考に記事作成をするのはWebライター業界では当たり前のこと。中にはWebライターは新聞記者のように取材をして記事作成をしていると思う方もいるかもしれませんが、現実はパソコンとGoogleを駆使して文章を執筆しています。
そんなWebライターのことを「こたつライター(こたつに入りながら仕事ができるから)」なんて呼んだりしますが、仕事内容によってはあながち間違いでもありません。
Webライターは体験もしていない商品を勧めがちだから
前項でWebサイトの収入源は
- 自分の商品を販売する
- Googleアドセンスに参加して広告で稼ぐ
- アフィリエイトと呼ばれる成果報酬型広告で稼ぐ
であると解説しました。
アフィリエイトの仕組みは、
おすすめの商品をサイトで紹介する→
読者がそのリンクを通して商品を購入する→
成功報酬がサイトの運営者に入る
という感じ。よってアフィリエイト記事の執筆を依頼されたWebライターは、その商品をいかにして買ってもらうかを意識した記事作成を行います。
もちろん実際に体験したレビューをもとに作成された記事もありますが、使ったこともない商品をネットの口コミをもとに勧めることもあります。
アフィリエイトプログラムに参加している商品は美容家電やクレジットカードなどだけではなく、プログラミングスクールの体験・入学、オンライン商材の購入などさまざまですので、体験する時間とお金をかけられない場合もあるでしょう。
ただ、そんなWebライター業界を知らない読者からすれば、使ってもいない商品を「最高です!」と勧める文章をゴミだと思っても致し方ないと思います。
ゴミ記事を書くWebライターに多くの人が殺到する理由3つ
Twitterで「Webライター」と検索してみてください。ズラ〜っとアカウントが出てきます。「勉強中」から「編集者」、「月収〇〇円超え」まで。「あ〜Webライターって儲からないしキツいし最悪」と書いている人はあまりおらず、「Webライター最高!」みたいな人が多いです。
ではなぜ、ゴミ記事を書くWebライターの仕事に多くの人が憧れ、志望者が殺到するのでしょうか?ここではその理由を考察してみます。
Webライターは誰でもなれるから
Webライターの参入障壁はWeb業界の中でも非常に低いです。数十万円を払ってプログラミングスクールに通う必要もなく、デザイン事務所でWebデザインのスキルを習得する必要もありません。
お金を出してくれるクライアントがいれば、恋愛や子育てのエピソードをスマホで綴るだけでお金がもらえます。カフェで友だちに話せば苦笑されるようなことでも、ネットに書けばお金になるのです。
簡単に言えば、Webライターの専門性は低いということ。文章を書いて自分のサイトに載せればブロガー、他人のサイトに載せればWebライターです。
私も副業Webライター時代は、スマホで完結する仕事がほとんどでした。Googleドキュメントのアプリをダウンロードして執筆し、クライアントに文章リンクを送るだけ。あとはクラウドワークスのアプリで支払いを確認…。そんな感じです。
つまり「自宅でお小遣い程度のお金を稼ぎたい」という人でも、Webライターはスマホ一つでなれる職業だといえます。
Webライターは楽しく稼げるイメージが強いから
SNS上にはWebライターに関する情報が溢れています。「毎日少しずつ着実にステップアップしている」「高単価の仕事がもらえて嬉しい」「1年前は、こんな充実した人生になるなんて思わなかった。Webライターになって本当に良かった」など前向きな発言が多いため、Webライターに対して楽しく稼げるイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
たしかに誰だって、副業でたっぷり収入があれば嬉しいはず。子どもとゆっくりご飯を食べて休日は遊びながら、お金を稼げたら…と思うでしょう。「楽しく稼げる、あなたもこっちにおいで」というWebライターのイメージが多くの人を呼び寄せていることは間違いないと思います。
Webライターは自宅でもできるから
今の時代、アルバイトやパートの仕事だって楽ではありません。出勤するのに身支度を整えて、電車の遅延にハラハラして、悪口言われても聖人君主みたいな大人の対応をして。その点Webライターは自宅で仕事が完結するので、やりたいと思う人が多いものも納得できます。
現在はWeb面談や研修、オフ会などをするパターンもあるようですが、そういうことが苦手なら避ければよいだけ。何時に起きてもよいし、寝癖を治す必要もないし、お菓子を食べながら仕事しても、突然寝転がってストレッチを始めてもOK。Webライターは、「お金も自由も欲しい」というニーズにおおむね応えているような職業かもしれません。
Webライターのゴミ記事がお金を生む場合もあります
「ライター」と聞くと文章力が素晴らしい人、と思いますよね。しかし、残念ながら、一概にそうとは言えない記事が散見されるのも事実です。Webライター業界を知らずに「Webライター=新聞記者のような人」と思っている人がWebの記事を呼んだら「ゴミだな」と思うのも仕方ないと思います。
ただし、「素晴らしい文章だからお金が稼げる」という構図が成り立たないのも、Webライター業界の事実。
Web記事の目的が「調べ物に対する答えを提供する」「商品を認知させる・売る」という「純粋に文章を楽しむ」から駆け離れたものであり、Googleのアルゴリズムによる評価項目に日本語の文章力がほとんど入っていないのがその理由です。
率直に言ってしまえば、Googleに認知されて評価されれば、文章は最低限のレベルでよい。「みんなにわかりやすく」をGoogleが求めているので、文章は中学生でもわかるように。ーーこれが現実です。
そういう私も、ゴミ記事を書いて暮らしているWebライターの一人。ただ、本記事でお話ししてきたように、文章を発表するGoogleというプラットフォームの性質上、やむを得ない現状もあります。もちろん、全てのWeb記事がひどいのではありません。これは大前提ですが、ここで再度はっきり伝えたいです。
Webライターに関するQ&A
Webライターを目指している方に向けて、もう少しWebライターについてお話しします。
Webライターは儲からないって本当ですか?
飽和状態が進んでいるため、一般的には儲からないといわれています。ただし儲かっている人がいるのも事実ですし、新しい業界で変化が激しいので、チャンスは十分にあるでしょう。「0から月収100万円を目指す」よりは「月に5万円サクッと稼ぎたい」の方が実現しやすい業界だと思います。
Webライターの実態を教えてください
少ない時間で十分な収入を継続的に得られている人は少ないのではないでしょうか。Webライターとは別に仕事をしている人も多いです。Webとはいえ下請け文化もきちんと存在するため、大手企業からの依頼でも末端ライターは少ない報酬しかもらえない…なんてこともあります。
Webライターの闇が知りたいです
未払いの事案は多いです。私も副業Webライターの頃、3000円の未払いを経験しました。当時は1記事300円で書いていたので、3000の未払いは非常に辛かったです。その発注者は他のライターとも揉めており、私はそのままそっと離れました。
Webライターって途中で飽きますか?
個人的な意見ですが、飽きません。私は周りが悠々自適な老後生活を送っていてもライターの仕事がしたいですし、死ぬまで文章を磨き続けたいです。ただ、私がライターを始めたころ執筆していたサイトは、今ではほとんど残っていません。数年前までSNSでチェックしていたWebライターさんの多くが、現在は消えてしまいました。若い方が多い業界なので、前向きな理由で方向転換する方は多い印象です。
Webライターは甘くないですか?
私にとっては甘くなかったです。私は副業としてWebライターを始め、その後フリーランスになりましたが、月に10万円を稼ぐまでに2年以上かかりました。副業時代はフルタイムで働きながら深夜1時まで時給100円くらいの案件を執筆。未払いも経験しましたし、過労で体調を崩し救急車で運ばれたこともありました。7年目の現在、なんとか続けておりますが、葛藤や苦労はその都度存在し、決して甘くないと感じています。
ゴミ記事でも書かなきゃいけないのがWebライターだと思う
質の高い記事をお探しの方には大変申し訳ないのですが、「ゴミ記事量産してお金を積み上げる」これがWebライターの実情です。個人的なジレンマですが、勉強して時間をかけて素晴らしい記事を書いても、それが収入に直結しない。これがWebライターの現実です。
Webライター業界は新しく成熟していません。まだまだ成長段階にあり、目新しいものや話題性のあるものが簡単にお金を集めてしまう嫌いがあります。Webライターを目指す人も、時間をかけて力を養うことよりも、目に見える利益に飛びつきがちです。
もう少し時間が経てば、ニーズが細分化されて質の高い記事エリアとゴミ記事エリアが分かれていくでしょう。(ゴミ記事が淘汰される、とはならないのがこの世の性)
Webライターの中にも「こんなんでいいのかな…」と思いつつ、生活のために目をつぶっている人も多いと思います。ゴミ記事が溢れるのは、Webライターだけの問題ではありません。発注者の問題、当たり前になっている下請け文化の問題、値段交渉が良い印象を与えないという日本文化の問題など、問題が複雑に絡み合った結果。
本記事がほんの少しでもWebライター業界を知るお役に立てれば嬉しいです。お読みいただき、ありがとうございました。