「不安」を表す英単語“anxiety”はラテン語の“anxietas”という言葉が由来だそうです。
はたまたラテン語の“anxietas”は古代ギリシャ語の“anxgh”(息苦しさなど身体的な苦しみ)という単語をルーツにしており、英語の“anxietas”にも精神的な不安と身体的な不安があることが分かります。
本記事をお読みの方は今現在何かしらの不安をお持ちかもしれません。
いきなり結論から申し上げると、きっと今の不安は1年後には99.9%消えています。
かなり高い確率で1年後には今の心配事は解決しているでしょう。不安というのは「まだ結果が出ていない状況」に対する心配の気持ちなので、ほとんどの場合1年後にはプラスにしろマイナスにしろ結果が出ているからです。
今回はそんな「不安」をさまざまな角度から眺めてみたいと思います。
目次
不安のメカニズム
不安なんて人間の感情からなくなったら良いと思いますか?「不安」という感情の役割はどのようなものなのでしょうか。
ここでは、不安のメカニズムについてご紹介します。
不安=身を守るための感情
まず「不安」という感情は、身を守るために必要な感情です。
例えば、不安の感情が強ければ強いほど、人間はリスクを避け安全な行動を取るようになるもの。「ウイルスに感染しまうのではないか」という不安は、ウイルスにより引き起こされる病気から身を守る役割があります。
不安という感情は人間の理論的思考と合わさることで、人間が賢明な判断をすることに役立つというメリットも。
- ウイルスに感染したくない
- 手洗いうがいが予防に有効だ
といった「不安な感情」と「手洗いうがいが有効という知識」がミックスされることで、より確実に危険から遠ざかることができるのです。
不安=常に連鎖している
不安という感情は常に連鎖しています。
例えば極度の潔癖症の人がいたとします。外は汚いと思い込み、外に出ることを止めました。しかし、だんだんそれだけでは足りなくなり、外から送られてくる郵送物にも触れなくなります。
それでも不安は拭いきれず、今度は「水道水も汚いのでは…」と不安になり、水を飲んだりお風呂に入ることもできなくなりました。
そうなると今度は、生命を維持することが危うくなり、不安はどんどん増していくのです。
以上の例は大げさかも知れませんが、このように常に不安というのは連鎖しています。どんどん終わりが見えなくなると言っても過言ではありません。
生きること=不安に片目をつぶっている状態
人間から完全に不安を取り除くことはできません。
いつ大地震が起きるか分かりませんし、車に轢かれてしまう可能性も0ではありませんよね。しかし、それらを全て不安に思っていたら、日常生活を送ることができなくなってしまいます。
つまり人間は不安の種を頭で把握しながらも、片目をつぶって「見て見ぬ振り」をしているのです。
更に言えば、恋人に嫌われたのではないかという不安で頭がいっぱいで眠れない人は、地震の不安も、交通事故の不安も無視して、恋人への不安だけを感じているということ。
言い換えれば今あなたの頭の中にある不安というのは、数ある不安の中から「選ばれた」不安なのです。
不安の種類とは?
不安という言葉を辞書で引いてみると、こんな風に書かれています。
気がかりで落ち着かないこと。心配なこと。また、そのさま。
(goo辞書より)
しかし、不安という感情はさらに下記のように3つに細分化することができるのをご存知ですか?
- 過去を振り返ることで生まれる不安
- 現在を正しく把握できていないことによる不安
- 未来を勝手に予想することで生まれる不安
ここでは、不安の種類についてご説明します。
過去を振り返ることで生まれる不安
1つ目の不安は「過去を振り返ることで生まれる不安」です。
この不安は、
- あの時ああすれば良かった…
- あの時あの人にああ思われたんじゃないか…
という過去を振り返って後悔することにより生まれます。
過去のことなんだから気にしなければ良いのでは?と思うかも知れません。しかし、過去は変えることができないからこそ不安になるとも言えるでしょう。
現在を正しく把握できていないことによる不安
2つ目の不安は「現在を正しく把握できていないことによる不安」です。不安のほとんどは、このパターンに当てはまるかも知れません。
例えば噛まれたら致死率5%の毒ヘビが自分の家の近所で目撃されたとしましょう。その蛇は1匹残らず駆除され、自治体も「安全」と言い切っています。
しかし、あなたはどうしても不安を拭うことができません。いつその蛇が現れるかと不安で仕方がないのです。
この場合は、本人は
- ほんの5%だけでも死んでしまう可能性がある
- 噛まれたら死んでしまうかも知れない
という不安に襲われています。しかしこれらの事実を違う角度から見ると
- 噛まれても95%は助かる
- 自治体がすでに駆除済み
という事実もあるのですね。このように、現実のより危険な可能性を信じ込んでしまうことで起こりうる不安もあります。
未来を勝手に予測することで生まれる不安
3つ目の不安は「未来を勝手に予測することで生まれる不安」です。
この不安は将来〜が起きるのではないか、将来〜になってしまうのではないか、と未来を信じることで生まれます。
例えば「将来大地震が起きて家が崩れるのではないか」という不安。もちろん、大地震が起きる可能性は常にあります。
しかし、未来を憂いて不安になったとしても、未来のリスクを避けることができるとは限りません。未来に対する不安の強い人は、いわゆる心配性の人だと言えるでしょう。
不安を感じやすい人の特徴3つ
不安になりやすい人には下記の3つの特徴があります。
- 他人の目を気にしすぎる人
- 感情を抑え込んでしまう人
- S型の遺伝子が多い人
ここでは、不安になりやすい人の特徴をみていきましょう。自分にも当てはまるかチャックしてみてください。
他人の目を気にしすぎる人
他人の目を気にしすぎる人は、不安になりやすい傾向にあります。特に対人関係に関する不安は、他人の目を気にしすぎることが原因です。
例えば、お客さんからクレームがくるんじゃなきかという不安、恋人に嫌われたんじゃないかという不安など、相手の気分を憂うということは、非常にストレスが貯まります。
もちろん他人の目を気にしすぎることを止めれば、この不安を抑えることができますが、突然物事の見方を変えるというのはなかなか難しいですよね。
感情を抑え込んでしまう人
感情を抑え込んでしまう人も不安になりやすいです。感情を抑え込んでしまうとストレスが貯まり、精神的な疾患になりやすくなってしまいます。
「不安」という感情は、精神的なストレスにより現れることも多いですので、感情を抑え込んでしまうと結果的に不安という状態に陥りやすくなるでしょう。
S型の遺伝子が多い人
遺伝子のタイプも不安感情も深い関係があるのをご存知ですか?
1996年に行われた実験では、セロトニントランスポーター遺伝子S型を持っている人は、セロトニントランスポーター遺伝子L型の人よりも不安感情を抱きやすいという結果が出ています。
何を隠そう日本人は、不安感情を抱きやすいS型の遺伝子を持つ人がほとんどなのです。
世界の中でも特に東アジアはS型遺伝子を持つ人が多いと言われていますが、最もS型遺伝子を多く持つのが日本人(80.25%)続いてが韓国人(79.45%)。
セロトニンは脳内で安心感などを発する物質ですが、S型の人はセロトニンを生産しにくいため、不安感情を抑えにくくなります。
およそ8割の人がS型遺伝子を持つ日本では、遺伝子レベルで不安を感じやすいと言えるでしょう。
今すぐできる!不安対処法3選
では、不安な感情に心が支配されている時、どのように対処したら良いのでしょうか。今回ご紹介するのは下記の3つ。
- 不安定な状況を受け入れる
- 事実のみを言語化する
- 意識をコントロールする
これら3つを実践するだけで、不安を少しずつ和らげることができるでしょう。ぜひ参考にしてください。
不安対処法①不確定な状況を受け入れる
まずは、現在の不確定な状況を受け入れましょう。
例えば仕事で失敗して取引先を怒らせてしまったとします。明日は上司と一緒にその取引先に挨拶に行く日。上司からどんな目で見られるのか、取引先にどれだけ罵倒されるのか、不安ですよね。
しかし、上司がどのような目であなたを見るのか、取引先がどのような言葉を発するのか、それは現時点では分かりません。
まずはその「分からない」状況を受け入れましょう。つまり、あなたがいま脅えようが、リラックスしながらアイスクリームでも食べようが、未来は変わらないのです。
さらに言えば、明日の今頃はこの不安は消えているでしょう。めちゃくちゃに怒られようが「明日がどうなるのか」という不安は消えています。そう思うと、少し楽になりませんか?
不安対処法②事実のみを言語化する
事実を言語化するのも有効。現在の不安な気持ちや現状を紙に書き出して見ましょう。
ポイントは「事実のみを」書き出すこと。
- 将来〜になるかもしれない
- 将来〜してしまうかもしれない
という不確定なことは書かないようにしましょう。例えば「治安が悪い国に行かなければいけない、事件に巻き込まれたらどうしよう」という不安がある場合
- 年間のスリ件数は100件
- 法人が事件に巻き込まれた件数は年間3件
- 殺人事件は犯罪の全体の11%
など、事実のみを書き出します。事実のみを書き出してみると、不安が根拠もなく大きくなっていることに気づくかもしれません。
不安対処法③意識をコントロールする
不安がある時は、その心配事で頭がいっぱいになってしまいますよね。しかし、あえてその心配事から意識をそらしてみましょう。
例えば瞑想をするのもおすすめ。姿勢を正して座り、目を閉じて、自分の呼吸に意識を集中させます。
30秒だけ不安から意識を逸らすことができれば、次は1分間に挑戦しましょう。そうしていくうちに、少しずつ不安から距離を取ることができるようになります。
心が楽になる不安に関する名言
不安な心には、茂みが熊に見えてしまうのです。
(シェイクスピア)
私がこれまで思い悩んだことのうち、98パーセントは取り越し苦労だった。
(マーク・トウェイン)
困難を予期するな。決して起こらないかも知れぬことに心を悩ますな。常に心に太陽を持て。
(ベンジャミン・フランクリン)
恐れてばかりいるより一度危険を犯す方が良い。
(トーマス・フラー)
どういう状況に置かれても、品性を忘れずに。
(リンカーン)
ピンチに陥ったら、
空を指差して神様にこういうのだ。
「たいしたことないよ」
(中谷彰宏)
きっと今の不安は1年後には99.9%消えている
今回は不安の対処法などについて解説しました。不安とは一見マイナスな感情のように思えますが、危険から身を守るというプラスの面もあります。
また、不安という感情は捉え方を変えることで遠ざけることも可能。一度不安になると、染物のように不安に満たされてしまいがちですが、知性と理性を持ってコントロールすることもできるのです。
一度、不安という感情を客観的に見ることで、心を軽くしてみてはいかがでしょうか?